ブドウ畑の様子

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農花ヴィンヤードのある小諸市糠地地区は、千曲川の右岸、浅間山や黒斑山の山塊に連なるほぼ南向き斜面に広がっています。糠地を代表するワイナリー、テールドシエルさんを筆頭に、すでに数人のワイン生産者が入植しており、千曲川ワインバレーの中でも新しいワイン産地として定着しつつあります。標高は約700~950メートルと高く、小諸の市街地に住む人々から見ると、「昔、遠足で行ったなあ~」という「山」エリアだそうです。

農花ヴィンヤードがあるのはおよそ標高850メートルのあたり。日当たりがよく日照時間が長い一方、冬はマイナス10度以下になることもざらです。このような涼しい気候下で実るブドウから出来たワインには、キリっとした酸が残る傾向がありますが、このあたりの夏もだんだん暑くなって来ている、と地元の方たちは口を揃えています。たしかに、数年前まで分厚い氷に覆われた溜池の水が、昨冬は凍ることなく終わってしまいました。温暖化は確実に進行しているのかもしれません。

 

ヴィンヤードは約30a、小さな畑です。520本ほどのブドウ樹を植えています。

赤品種:カベルネフラン中心(メルロー、カベルネソービニョン少量)

白品種:シャルドネ、ミューラートュルガウ、ソービニヨンブラン、ケルナー、バッカスなど。(プチマンサン、ゲヴェルツトラミネール、リースリングなども少量)

 

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ヴェレゾン(色づき)が始まったメルロー

 

栽培は、「できるだけ自然に近い形で」を目標にしています。除草剤なし、不耕起・無施肥で育てています。根っこの周りの共生菌など、土壌の微生物をバランスよく増やし、ブドウがこの地の環境に、より順応していくよう促したいと考えるからです。

消毒には、新JAS法有機農産物で使用を認められているボルドー液を散布します。ウドンコ病などのカビがでたときには、殺菌のために重曹水をスプレーすることもあります。

今年、テールドシエルさんで委託醸造を受けていただけることになり、醸造長の桒原さんが「野生酵母」によるワインづくりをしていることもあって、桒原さんにも相談に乗っていただきながら、どうやって皮に付着している「土地の酵母」を元気にさせるか、より気を付けるようになりました。今年は梅雨が長く、通気性を確保したかったため、7月後半~8月になってから紙の傘をぶどうに一つ一つかけましたが、傘かけのタイミングも、来年以降、ベストな時期を探っていきたいと思います。

ロウでコーティングされた紙の傘をかけるのは、雨に当たらないことでべと病の発生を防ぐともに、皮についた酵母も守ってくれるので重要です。小さな畑だからこそ、できることを大切にしていきます。

 

9月24日、白ワインを初仕込みしました

傘かけは、1年を通してのブドウの世話の中で、最も大変さを感じる作業でした。

 

3月の芽吹き前には、ハモグリダニの予防のために、やはり有機栽培で認められている石灰硫黄合剤を撒きます。また、今回は、コウモリガやトラカミキリなどの幼虫が、枝の中に入って芯を食い尽くし、樹を枯らしてしまう被害を減らすために、落葉後に殺虫剤散布、5月に虫除けの薬を幹の下のほうに塗布しました。これらの幼虫は、枝の中にいるので、見た目にはほとんど分かりません。幼虫が活動を始め、ある程度大きくなると、木の勢いが弱り始めます。そういった木をよーく見ると、おがくずのような幼虫の食べカスが、幹や枝の周囲に輪になってたまり、そこに穴が開いています。もちろん、見つけ次第、その小さな穴から針金を突っ込んだり、細い管で殺虫剤を入れたりして木から追い出し、ハサミで真っ二つにして退治します。

それ以外は、化学系殺虫剤は控えるように努めています。テントウムシやカエル、ミツバチなどを殺さないためです。なので、夏になると、葉を食害するマメコガネを手で取って(テデトール)、水の入ったペットボトルに集めます。マメコガネはのんびりした虫なので、かんたんに水の中に落ちます。よく見るとなかなか美しい虫ですが、農家にとっては大敵です。一説によると、このマメコガネが、ニワトリの大好物らしく、いつか、ニワトリを飼って、畑に連れてきたいなあと思っています。

 

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 2018年冬に訪れたアルザスのブドウ畑の仕立てをまねてみたカベルネフランの区画

 

牛糞や鶏糞などは、窒素過多になるのを避けるため、与えていません。かわりに、畑の下草に、窒素固定効果のあるマメ科のシロツメクサ、ヘアリーベッチ、クリムゾンクローバーなどの種をまいています。バーク堆肥、燻炭やボカシ堆肥などは、ブドウ畑の横に作っている小さな野菜畑で試しています。自然農法、有機農法、減農薬の本や資料などを読みながら、試行錯誤の最中です。

 

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ヘアリーベッチの花。クサフジの仲間です。

 

春から夏、畑には、オオイヌノフグリ、タンポポ、ヒメオドリコソウ、ヨモギ、フキ、ノビエ、オニノゲシ、ギシギシ、カモガヤなどがどんどん生えてくるので、ときどき草刈りをします。ギシギシやタンポポなどはとても根が深く、厄介なのですが、この畑は粘土で、晴天が続くとカチコチに硬くなってしまうので、かえってよいのではないかとポジティブにとらえることにしています。深く張る雑草の根は、自然農法の考え方では、「自然の耕起」と考えます。根が腐ったあとに、隙間ができ通気性がよくなるからです。とはいえ、タンポポがあまりに巨大になってきて、可憐さなどみじんも感じられなくなり、恐怖すら感じる昨今です(笑)。

春先には株の間に藁をしきつめ、草マルチにしています。乗用モアで刈った草も、株の間に集めて草マルチにするようにしています。それでもやはり、夏の終わりには、株の周りと背の高いイネ科の草が覆います。秋の長雨の前に、ブドウの実の周りの通気性を確保するための草刈りは欠かせません。

 

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早春のブドウ畑。ヒメオドリコソウなど、自然のお花畑が広がります。標高が高く寒いエリアなので、ブドウ樹は藁を巻かれて越冬します。

 

雑草の力は本当に強く、1年目はブタクサランド、2年目はぺんぺん草ランドになり、今年は一面のタンポポ畑となりました。春先に畑を占拠する草が年ごとに変わっていくのが面白いです。来年、再来年の春にはどうなっていくのか楽しみです。

初年度はベタベタの裸地だったのが、草に覆われることによって、だんだんミミズが増えてきました。

テントウムシ、ミミズ、モグラなど、大きな生き物たちの力も借りて育てている感じです。「自然農法」を実践する先人たちの知恵を取り入れつつ、土地とそこに生きる生物たちを大事にしながら、ブドウにとって最適といえる自分なりの「農法(といえるほどのものではありませんが…)」を確立していきたいと思います。

(2020年 コロナ禍の春に)